同性カップルが賃貸で断られる理由と、断られにくい探し方

同性カップルが賃貸で断られるのは、「二人入居可」が夫婦を想定していること、ルームシェア扱いになること、複数の会社が審査に関わることが重なるためです。内見の前に同性二人で申し込めるかを仲介会社に確認してもらい、収入や緊急連絡先を準備しておくと、断られる回数を減らせます。
同性カップルが賃貸で断られるのはなぜか
同性カップル、とくに男性二人の部屋探しで断られる理由は、「同性だから」という一つの理由だけではありません。「二人入居可」が夫婦や婚約者を想定していること、ルームシェア扱いになること、審査に関わる会社が複数あることが重なって、どこかの段階で止まってしまうのが実態です。
裏を返せば、止まりやすい場所は前もって分かります。この記事では、断られる仕組みを分解し、申し込む前にできる確認と、断られたあとの動き方をまとめます(2026年9月時点の情報です)。
断る側が気にしていること
大家さん(オーナー)や管理会社が気にするのは、多くの場合「家賃がきちんと払われ続けるか」「トラブルなく住んでもらえるか」です。同性カップルの入居に慣れていない場合、判断材料が少ないために「前例がないので見送る」となることがあります。
具体的には、次のような心配がよく挙がります。
- どちらかが先に出て行ったとき、残った一人で家賃を払えるか
- 契約者が亡くなったとき、同居人が住み続ける扱いをどうするか(法律上の家族でないため)
- 男性二人の生活音や、来客が多くなるのではという思い込み
最後のような偏見に近いものもありますが、前の二つは契約の仕組みから生まれる実務上の心配です。相手が何を心配しているかを知ると、先回りして答えられるようになります。
データで見る、当事者の住まい探しの困りごと
当事者の住まいの困りごとは、大学の研究室による調査で数字が出ています。追手門学院大学の葛西リサ教授らが2021年に行ったWeb調査(回答1,779名)では、次のような結果でした。
出典:追手門学院大学 OTEMON VIEW(2021年10〜11月実施のWeb調査・回答1,779名/2026年9月確認)
同じ研究室が2020〜2021年に行った別のWeb調査(回答180名)でも、似た傾向が出ています。
数値を表で見る
| 項目 | 値 |
|---|---|
| セクシュアリティを開示することにストレス | 64.0% |
| 不動産屋に行くことに抵抗や不安 | 48.0% |
| 同性パートナーと一緒だと住まいを確保しにくい | 37.2% |
| 不動産会社の対応を不快に感じる | 24.4% |
出典:LIFULL HOME’S PRESS(追手門学院大学 葛西研究室の2020年12月〜2021年3月のWeb調査/2026年9月確認)
「隠れて同居した」が6割にのぼるのは、正面から申し込むと断られるかもしれない、という不安の表れと読めます。ただ、隠れて住むと契約違反を問われる心配が残ります。この記事では、隠さずに通しやすくする方向で考えます。
「二人入居可」と「ルームシェア可」は別物
「二人入居可」は夫婦・婚約者の想定が多い
物件情報の「二人入居可」は、実際には夫婦や婚約者、親子など家族での入居を想定していることが多い表示です。書かれていないだけで、友人同士や同性カップルは対象外という物件もあります。
そのため、ポータルサイトで「二人入居可」で絞り込んでも、申し込んだ段階で「ルームシェアは不可です」と言われることがあります。これは物件ごとに違うので、表示だけで判断しないのが安全です。
ルームシェア扱いになると条件が変わる
同性カップルは法律上の婚姻ができないため、書類の上では「ルームシェア」「友人同士」として扱われることがあります。ルームシェア可の物件では、次のような条件がつく場合があります。
- 二人とも契約者になる(連名契約)、または一人が契約者でもう一人が連帯保証人になる
- 二人それぞれの収入を確認される
- 保証会社の利用が必須
- 一人が退去するときの取り決め(再審査・契約のやり直し)
条件は管理会社や保証会社によって異なります。申込書の続柄欄をどう書くかは、申込書の続柄の書き方の記事で詳しく扱っています。
審査の流れと、断られやすい段階
賃貸の審査は、一つの会社が決めているわけではありません。仲介会社・管理会社・オーナー・保証会社が順に関わり、どこか一か所で止まれば借りられません。
- 仲介会社に相談・物件確認仲介会社が管理会社に「同性二人の入居が可能か」を問い合わせる。ここで不可と返ることがある
- 内見条件が合えば部屋を見る。確認前に内見すると、あとで断られて時間が無駄になりやすい
- 入居申込入居者全員の情報・勤務先・収入・続柄を書く
- 管理会社の確認申込内容を見て、オーナーに回すかを判断する
- オーナーの判断最終的に入居を認めるかを決める。同性二人の前例がないと慎重になりやすい
- 保証会社の審査収入・勤務先・緊急連絡先などを見る。関係性ではなく支払い能力が中心
- 契約重要事項説明を受けて契約する
注意したいのは、断られた理由がどの段階だったかは、はっきり伝えられないことが多い点です。「今回はご縁がなく」と言われても、それが関係性の問題なのか、収入や勤務年数の問題なのかは分かりません。
断られやすい理由と、事前にできる対策
よくある理由ごとに、申し込む前にできることを表にしました。すべてを満たす必要はありませんが、準備できるものが多いほど話は進みやすくなります。
| 断られやすい理由 | 事前にできる対策 |
|---|---|
| 「二人入居可」が夫婦・家族のみの想定だった | 内見前に、仲介会社から管理会社へ「同性二人・カップルでの入居が可能か」を確認してもらう |
| ルームシェア不可の物件だった | 最初から「ルームシェア可」「LGBTQ+フレンドリー」の条件で探してもらう |
| 一人が退去したあとの家賃が心配される | 二人の収入をそれぞれ示す。一人の収入でも払える家賃帯を選ぶと安心材料になる |
| 収入・勤続年数が審査基準に届かない | 源泉徴収票や課税証明書をそろえる。家賃を下げる、保証会社の選択肢を相談する |
| 緊急連絡先が用意できない | 保証会社によって親族を求める場合があるため、パートナーでよいかを事前に確認する |
| 関係性が伝わらず「前例がない」とされる | パートナーシップ宣誓の受理証明書などがあれば、使えるかを聞いてみる |
| 担当者に説明するのがつらい | LGBTQ+の相談に慣れた不動産会社を選び、最初に一度だけ伝えて代わりに確認してもらう |
出典:編集部作成(2026年9月時点)。審査基準は管理会社・保証会社ごとに異なります
パートナーシップ制度は「材料の一つ」
東京都は2022年11月に「東京都パートナーシップ宣誓制度」を始めており、都営住宅の入居申込などで使えるとしています(2026年9月時点)。民間の賃貸でどう扱うかは法律で決まっておらず、管理会社やオーナーごとに判断が分かれます。
受理証明書があれば必ず通るわけではありませんが、関係性を説明する材料にはなります。区や市の制度もあるので、住んでいる自治体の制度を確認しておくとよいでしょう。
内見の前にやっておくこと
いちばん効果があるのは、内見の前に「同性二人で申し込めるか」を仲介会社に確認してもらうことです。気に入った部屋を見たあとで断られるのは、時間的にも気持ちの上でも負担が大きくなります。
- 希望条件と一緒に「同性パートナーと二人で住む」と最初に伝える
- 候補の物件ごとに、管理会社へ入居可否を確認してもらう
- 連名契約か、一人契約+同居人かを聞いておく
- 保証会社の緊急連絡先の条件を聞いておく
- 二人分の本人確認書類・収入証明を用意しておく
説明するのが負担なら、相談に慣れた不動産会社に一度伝えれば、以降の確認はまとめて代わりにしてもらえます。街選びから考えたい場合は、東京で暮らしやすい街や新宿二丁目の近くに住むの記事も参考にしてください。
断られたあとにできること
断られると落ち込みますが、その物件と条件が合わなかっただけのことも多くあります。次の順で考えると、次の申込につなげやすくなります。
1. 理由を聞ける範囲で聞く
仲介会社に「関係性の問題か、収入などの条件の問題か」を分かる範囲で聞いてみます。詳しい理由は開示されないこともありますが、収入や保証会社の問題なら家賃帯や保証会社を変えることで解決する場合があります。
2. 探し方を変える
同じ仲介会社で断られ続けるなら、LGBTQ+の相談に慣れた会社に切り替えるのも方法です。LGBTQ+に対応する不動産会社を探せるサービスもあります。受け入れ実績のある管理会社の物件を中心に探してもらうと、無駄な申込が減ります。
3. 差別的な対応を受けたときの相談先
性的指向を理由にした明らかな差別的対応を受けた場合は、法務局の人権相談や、自治体の人権相談窓口に相談できます。一人で抱え込まず、記録(日時・やりとりの内容)を残しておくと相談しやすくなります。
参考にした資料
- 追手門学院大学 OTEMON VIEW「性的マイノリティ(LGBTQ)が直面する住宅問題」(2026年9月確認)
- LIFULL HOME’S PRESS「LGBTQが抱える住まい・不動産の課題とは」(2026年9月確認)
- 東京都総務局人権部「東京都パートナーシップ宣誓制度」(2026年9月確認)
- 法務省「常設相談所(法務局・地方法務局・支局内)」(2026年9月確認)